売電の仕組みと卒FIT後の選択肢|自家消費へシフトする考え方
目次
太陽光発電を検討するとき、「売った電気でどれくらい収入になるのか」を気にする方は多いはずです。ところが、売電を主役に考えると、制度の変化に振り回されやすくなります。とくに固定価格買取(FIT)の期間が終わる「卒FIT」を境に、電気との付き合い方は「売る」から「自分で使う」へと重心が移っていきます。
ソラドコは、売電についても制度の数値をあてにした皮算用ではなく、自分で使って払わずに済む効果を軸に考えることを大切にしています。この記事では、売電と自家消費の関係、卒FITで何が変わるのか、そして自家消費へ寄せる考え方を、具体的な制度の数値を本文に直書きせず、マスタ連動の前提表と電気の流れの図で整理します。
売電と自家消費は、同じ電気の「行き先」の違い
太陽光でつくった電気には、大きく2つの行き先があります。ひとつは、その場で家の中で使う「自家消費」。もうひとつは、使いきれずに余った分を電力会社などに送る「売電」です。発電した電気は、まず家で使われ、余った分だけが売電に回るという順序になっています。
「売る単価」と「使う単価」を見比べる
ここで大切なのが、電気の単価には2種類あるという点です。ひとつは売る電気の単価、もうひとつは自分で使うことで払わずに済む電気の単価です。上の前提表を見ると、この2つの単価が並んでいます。一般に、自分で使う電気の単価のほうが売る電気の単価より高いため、同じ1kWhなら、売るよりも自家消費に回したほうが手元に残る効果は大きくなりやすい構図です。
この単価の差こそが、「売るより使うほうが有利になりやすい」と言われる理由です。売電収入は魅力的に見えますが、単価そのものを見比べれば、自分で使う電気を減らさずに済むことの価値が浮かび上がってきます。前提表の単価は年度や契約で変わるため、確認日つきの目安として示しています。
電気の流れで配分を見る
言葉だけでは配分が実感しにくいので、電気の流れを図で確かめます。次の図は、昼に発電した電気が自家消費と売電にどう分かれるかを、在宅パターンごとに示したものです。
屋根で発電
自家消費
買電単価 34円/kWh 相当
売電
売電単価 15円/kWh
昼にほとんど家にいない家庭では、発電した電気の多くが自家消費されずに売電へ回ります。図の売電に流れる矢印の太さを見てください。売電の割合が大きいほど、売る単価の水準に効果が左右されやすくなります。次は、平日も在宅する家庭の流れです。
屋根で発電
自家消費
買電単価 34円/kWh 相当
売電
売電単価 15円/kWh
平日も家にいる家庭は、昼に使う電気が多いため、自家消費の割合が高くなります。同じ発電量でも、自家消費に回る分が多いほど、売る単価の変動に左右されにくく、効果が安定しやすくなります。この2つの図の違いが、「自家消費を増やす」ことの意味を端的に表しています。
自分がどちらの家庭に近いかを知ることは、太陽光の効果を正しく見積もる第一歩になります。昼に不在の時間が長ければ、発電した電気は売電へ流れやすく、その効果は売る単価に依存します。昼に在宅する時間が長ければ、発電した電気を自分で使いやすく、その効果は自分で使う電気の単価に支えられます。どちらが良い悪いではなく、自分の暮らし方に応じて、効果の土台が「売る単価」か「使う単価」かが変わるということです。この土台の違いを理解しておくと、後で述べる卒FIT後の判断がぐっとわかりやすくなります。
卒FITで何が変わるのか
売電の条件は、ずっと同じではありません。とくに大きな節目が、固定価格買取(FIT)の買取期間が終わる「卒FIT」です。
期間中と期間後の違い
FITの期間中は、あらかじめ決められた条件で売電できます。ところが、この買取期間が終わると、その水準の買取が続くとは限りません。売電の条件は、契約先や年度によって変わっていきます。多くの場合、売る電気の単価は期間中より下がる方向に動くため、「売って稼ぐ」という前提が弱まります。
ここで注意したいのは、制度の数値は年度や契約で変わるという点です。この記事では、具体的な買取単価や期間、制度名を本文に断定して書くことはしません。前提表に示した目安の単価も、卒FIT後の水準を想定した将来変動する前提の値です。数字そのものより、「売る前提から自分で使う前提へ重心が移る」という構図を理解することが、長く役立つ見方になります。
だから自家消費へ重心が移る
売る単価が下がる方向に動くとき、余った電気を安く手放すより、自分で使って高い単価の電気を買わずに済ませるほうが、手元に残る効果は大きくなりやすくなります。これが、卒FITを境に「自家消費へシフトする」と言われる背景です。売電収入をあてにした計算から、自家消費で払わずに済む効果を中心にした計算へと、見方を切り替えていくことになります。地域ごとの日射条件による発電量の目安は地域から探すページで確認できます。
自家消費を軸にした考え方
売電の単価に左右されにくい家計にするには、自家消費を軸に考えるのが基本です。ここでは、その具体的な考え方を整理します。
昼に電気を使う工夫
自家消費を増やす最も素直な方法は、発電している昼の時間帯に電気を使うことです。洗濯や食器洗い、掃除など、時間をずらせる家事を昼に寄せれば、その分を売電ではなく自家消費に回せます。昼に家にいる時間が長い家庭ほど、この工夫の余地は大きくなります。
在宅パターンで効果は変わる
自家消費のしやすさは、暮らし方によって変わります。次のカードは、平日も在宅する家庭で、自家消費が多くなる条件の試算例です。
- 5kW
- 6,180kWh
- 130,000円
- 125万円〜175万円
9.6〜13.5年
このカードの効果は、昼に自分で使う電気を、高い単価で買わずに済ませることから生まれています。売電収入をあてにしなくても、自家消費だけで一定の効果が見込めるのがわかります。次は、昼にほとんど家にいない家庭の例です。
- 5kW
- 5,933kWh
- 107,000円
- 125万円〜175万円
11.7〜16.4年
昼に不在の家庭は、発電した電気が売電に回りやすく、売る単価の影響を受けやすくなります。この場合、昼の余った電気を蓄電池でためて夜に使えば、自家消費に変える余地が生まれます。ただし蓄電池は費用がかかるため、その価値は別の軸で判断する必要があります。
もっとも、蓄電池を持ち出す前にできることもあります。たとえば、時間をずらせる家事や家電の運転を昼の発電時間帯に寄せるだけでも、売電に流れていた電気の一部を自家消費に変えられます。生活のリズムを大きく変えずに寄せられる範囲を探すのが、無理のない出発点です。それでも昼に使いきれない電気が多く残り、その分を夜に使いたいと感じたときに、はじめて蓄電池が現実的な選択肢として浮かび上がります。順序としては、まず暮らしの工夫で自家消費を寄せ、足りない分を設備で補う、という流れが自然です。
蓄電池は「別の判断軸」で考える
昼に余る電気を夜に回したいなら、蓄電池が候補になります。ただし、蓄電池を足すと導入費が増え、経済効果の面では回収年数が延びる傾向があります。「卒FITだから蓄電池が必須」と急かされることもありますが、これは冷静に見極めるべき話です。蓄電池を足すかどうかは、経済効果と停電対策を分けて考えるのが基本です。詳しくは蓄電池は必要か?後付けと同時設置の考え方で整理しています。
売電収入をあてにしすぎない見積もり
売電を主役にした計算には、注意すべき落とし穴があります。ここを押さえておくと、制度の変化に振り回されずに済みます。
単価は変わる前提で見る
売電単価は、契約先や年度によって変わります。過去に聞いた単価や、期間中の高い単価をそのまま将来にわたって当てはめると、実際とのギャップが生まれます。前提表の売電単価も、卒FIT後の水準を想定した目安であって、確定した将来の数字ではありません。売電収入を計算に組み込むときは、必ず「この単価は変わりうる」という前提で見てください。
自家消費を効果の土台にする
より安定した見方は、自家消費で払わずに済む効果を土台にすることです。自分で使う電気の単価は、電気代が上がる局面ではむしろ高まることもあり、自家消費の価値は下がりにくい傾向があります。売電収入を上乗せの位置づけにして、自家消費を効果の柱に据えれば、売る単価が下がっても計算が大きく崩れにくくなります。次の内訳表で、導入費の目安と自分の見積もりを照らし合わせておきましょう。
見積もりが1kWあたり 455,000円(この容量なら約228万円)を超える場合は、内訳の説明を求め、相見積もりを取ることをおすすめします。
導入費が容量に見合っているかを1kWあたりの単価で確認したうえで、自家消費を軸にした効果と照らせば、売電の変動に左右されにくい判断ができます。費用の見方は太陽光の設置費用相場とkW単価の見方で詳しく解説しています。
売電と自家消費を判断するためのチェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、売電と自家消費を判断するときのチェックリストを整理します。
- 売る単価と自分で使う単価を、前提表で見比べたか
- 自分の在宅パターンで、自家消費と売電の割合を図で確認したか
- 卒FITで売電の条件が変わりうることを前提にしているか
- 売電収入をあてにしすぎず、自家消費を効果の柱にしているか
- 昼に電気を使う工夫で、自家消費を増やせる余地を探したか
- 蓄電池は経済効果と停電対策を分けて別途検討しているか
- 制度の数値は最新の情報を確認する前提でいるか
このチェックリストの核心は、「売る前提から、自分で使う前提へ重心を移す」という一点です。この見方に切り替えれば、制度や単価の変化に振り回されにくくなります。
まとめ:売る前提から、使う前提へ
太陽光の電気は、売ることも、自分で使うこともできます。しかし、卒FITを境に売る単価は下がる方向に動きやすく、売電を主役にした計算は制度の変化に左右されがちです。より安定した見方は、自分で使って高い単価の電気を買わずに済ませる効果を軸に据えることです。売電収入は上乗せの位置づけにして、自家消費を効果の柱にすれば、単価の変動に左右されにくい判断ができます。
ソラドコのシミュレーターは、あなたの在宅パターンや電気の使い方を反映して、自家消費と売電の割合、回収年数の目安を計算します。約60秒・個人情報の入力は不要です。費用の目安は費用の目安ページから、地域ごとの日射条件は地域から探すページから、蓄電池を足す判断は蓄電池は必要か?後付けと同時設置の考え方から確認できます。
売電について、私たちは「売れば儲かる」とも「もう売電に意味はない」とも言いません。売る単価と使う単価を見比べ、自分の使い方に合わせて自家消費へ寄せ、制度の変化を前提に判断する。その材料として、この記事とシミュレーターを役立てていただければ幸いです。
よくある質問
Q売電と自家消費はどちらが得ですか?
どちらが有利かは、売る電気の単価と、自分で使うことで払わずに済む電気の単価との差で決まります。一般に、自分で使う電気の単価のほうが売る電気の単価より高いため、同じ1kWhなら売るより自家消費に回すほうが手元に残る効果は大きくなりやすい構図です。ただし具体的な単価は契約先や年度で変わるため、この記事では前提表(MasterFacts)で目安を示し、本文には金額を直書きしていません。自分の使い方でどちらに寄せるのが合うかは、電気の流れの図で確かめてください。
Q卒FITとは何ですか?売電はどうなりますか?
卒FITとは、固定価格買取(FIT)の買取期間が終わることを指します。この期間中はあらかじめ決められた単価で売電できますが、期間が終わると、その水準の買取は続かず、売電の条件は契約先や年度によって変わります。多くの場合、売る電気の単価は期間中より下がる方向に動くため、「売る」から「自分で使う」へ考え方を寄せる動機になります。具体的な単価や期間は制度・契約によって異なるため、必ず最新の情報を確認してください。
Q卒FIT後に何を選べばいいですか?
大きく分けて、余った電気を引き続きどこかに売る、自分で使う割合を増やす、蓄電池でためて夜に使う、といった方向があります。どれが合うかは、昼にどれだけ在宅して電気を使うか、電気代がどれくらいかによって変わります。この記事では、まず「自分で使う割合を増やす」考え方を軸に、電気の流れの図で自家消費と売電の配分を確認する方法を示しています。蓄電池を足すかどうかは、経済効果と停電対策を分けて別途検討するのがおすすめです。
Q売電単価が下がると太陽光は損になりますか?
一概に損とは言えません。売電単価が下がっても、自分で使う電気の単価は下がるとは限らず、むしろ電気代が上がる局面では自家消費の価値は高まります。売電に頼る前提だと単価低下の影響を受けますが、自家消費を軸に考えれば、売る単価の変動に左右されにくくなります。大切なのは、売電収入をあてにした計算ではなく、自分で使って払わずに済む効果を中心に見積もることです。
Q自家消費を増やすにはどうすればいいですか?
発電している昼の時間帯に、電気を使う家事や家電の稼働を寄せるのが基本です。昼にほとんど家にいない家庭は自家消費率が低くなりやすく、その分を自家消費に変える余地として蓄電池が検討対象になります。逆に平日も在宅する家庭は、もともと昼に使う電気が多く、自家消費率が高くなりやすい傾向があります。まずは自分の在宅パターンを前提に、電気の流れの図で自家消費と売電の割合を確認し、無理なく昼に寄せられる部分を探してみてください。